パラシャット・ヴァイェッツェーの「ヴァイェッツェー」は創世記28章10節「さてヤコブはベエルシバを立って」の「さて~立って」にあたる言葉です。
ヤコブは前回のパラシャ―で学んだように、兄エサウから長子の特権と長子の祝を奪い取ったために、兄から命をねらわれ、逃げる羽目となってしまいました。
ところが、ヤコブの運命が急展開します。
28章11節に「一つの所に着いた」とありますが、原文では「ある場所にぶつかった(イフガア)」となっていて、そこである大事なことが起こることを示します。日が暮れ石を枕に寝ていると、梯子が天に達して天使が上り下りする夢を見ました。その時、アブラハムの神、イサクの神である主が、「この地をあなたと子孫に与え、あなたの子孫は多くなり、地の諸族はあなたと子孫によって祝福を受け、私はあなたと共にいてあなたをこの地に連れ帰る」という声を聞きました。ヤコブは驚いて「これは何という恐るべき所、神の家(ベイト・エロヒーム)、天の門(シャアル・ハシャマイム)」と叫びます(28章16-17節)。
この出来事はヤコブにとって決定的なことで、アブラハムの祝福を受け継ぐ神の人ヤコブに変えていきます。
この後、嫁を娶るためにパダンアラムまで旅を続け、井戸で叔父ラバンの娘ラケルに出会い、求婚します。ヤコブはラケルを娶るために、ラバンのもとで7年間、働きますが、彼女を愛していたので数日のように思われたとあります(29章20節)。ところが妹を姉より先に結婚させることはないとして、姉のレを娶ることになります。それでヤコブはさらにラケルのために7年間働いてラケルと結婚します。
その後ヤコブはレアとつかえめジルパ、ラケルとつかえめビルハによって11人の息子と一人の娘をもうけることになります。
レアは、ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、娘デナ、ジルパは、ガド、アセル、ラケルはヨセフ、ビルハは、ダン、ナフタリをそれぞれ産みます。この11人が後のイスラエル民族12部族の祖先となります。
30章25節で、ヤコブはラケルがヨセフを産んだ後、ラバンに自分の故郷に帰らせてくださいとお願いしますが、なお留まるように言われたので、報酬を申し出て留まりましたが、神はヤコブを祝福して、報酬であるラバンの家畜の群れのぶちのもの、まだらのものが、多く産まれ、43節には「この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだ、ろばを持つようになった」とあります。
その時ヤコブはラバンの子らが「ヤコブはわれわれの父の物をことごとく奪い、父の物によってあのすべての富を獲たのだ」と言っているのを聞きます。そしてヤコブがラバンの顔を見るとそれは自分に対して以前のようではなかったと31章1、2節に書かれています。
それまでどちらかというとヤコブはラバンから冷遇されて来ました。それに耐えながら20年も働いてきました。ところが今まで嫌いだと思われた顔が以前とは違って見えたとは、物質欲が強いラバンが親しい存在と映ってきたとも解釈できます。それだけヤコブが物質的になったことを意味しているかも知れません。その時、神は「あなたの先祖の国に帰り、親族のもとに行きなさい。私はあなたと共にいるであろう」と声をかけます(3節)。
10節でも、夢にすべてしまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものの雄山羊が出てきて、物質的になったヤコブが暗示されています。
その時、神は再び「私はベテルの神です。かつてあなたはあそこで柱に油を注いで、私に誓いをたてましたが、今立ってこの地を出て、あなたの生まれた国へ帰りなさい」と声をかけ、故郷に帰るように促します。
それでヤコブはレアとラケルに相談し、ラバンには内緒でパダンアラムを去り、カナンの父イサクもとへ帰ろうとします。それを知ったラバンは後を追いかけ、ギレアデの山地で追いつきます。そこで二人は石塚を立ててアブラハムの神、ナホルの神、彼らの父の神に誓って、お互いに害を加えないように契約を結びます(31章53節)。
ずる賢かったヤコブが、兄のエサウから逃げて過ごした20年間で、神を忘れそうになると、神は2度、3度と声をかけ、神と出会ったベテル地、故郷に帰るように促されます。
このパラシャ―で学ぶことは、私たちにも、魂の故郷があり、そしてその故郷に帰らないと私たちの魂も安心を得ることができないことではないでしょうか。
長子の祝福を奪い取るようなずる賢い性格のために、兄エサウから逃げ出さな ければならない羽目ととなったわけです。このパラシャ―では、そんなヤコブでしたが、逃げる途中、思いもよらない不思議な体験を通して、それまでの運命がガラッと変わることから始まります。
28章11節は「一つの場所に着いた時」とありますが、原文では「イフガア」とあり一つの場所に「ぶつかった、出会った」とのニュアンスあり、特別なことが起こる前兆を表しています。
それは12節以降に述べられているように、日が暮れたので、石を枕として寝ていると、一つの梯子が地から天に達していて、そこを天使が上り下りする夢を見る体験です。その時、主がそばに立って「私はあなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたの子孫は地のちりのように多くなり、西、東、北、南、に広がり、地の諸族はあなたとあなたの子孫によって祝福を受ける。あなたがどこに行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れ帰る」(13-15節)と告げます。ヤコブは驚いて、「まことに主はこの所におられるのに、わたしは知らなかった」「これはなんという恐るべき所だろう。これは神の家(ベイト エロヒーム)である。これは天の門(シァアル ハシャマイム)(16-17節)と叫びます。
この体験はそれまでのずる賢いヤコブから、アブラハムの神、イサクの神を自分の神とし、その祝福を受け継ぐヤコブに変身させました。ヤコブは誓いを立てて、その場所をベテル(神の家)と名づけました(19節)。
さてヤコブは叔父ラバンの娘を妻に娶るためにパダンアラムにむかいますが、井戸のそばで、ばったり羊を飼っていた叔父ラバンの娘ラケルに出会い、ラバンのもとで働くことになります。ラバンにはラケルの姉レアもいましたが、ヤコブはラケルを愛したので、彼女を妻とするために7年間働きました。しかしそれは数日のように思われたとあります(29章20節)。そしてラケルを妻としようとしたが、ラバンは妹が姉より先に嫁がせることはないとして、レアを妻として与えたので、なお7年間、ヤコブはラケルを妻とするために働かねばなりませんでした(29章30節)。
その後、レアとつかえめジルパ、ラケルとつかえめビルハから11人の男子が生まれ、後のイスラエル民族の12部族の祖先となります。
レアからは、ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、娘デナが生まれ、ジルパからは、ガド、アセルが生まれ、ラケルからは、ヨセフ、ビルはから、ダンとナフタリが生まれます(29章31―24節)。
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