バルナバという人 ── 引き上げてくれた友(人物篇07)

パウロは、最初から一人で立てたわけではない。彼を世に引き上げた人がいる。バルナバだ。

【場面】受け入れてくれた人
回心して間もないサウロがエルサレムに現れたとき、弟子たちは彼を恐れた。無理もない。つい先ごろまで、教会を追い回していた迫害者である。誰も信用しない中で、ただ一人バルナバが彼を受け入れ、使徒たちに引き合わせた(使徒9:26〜27)。のちにバルナバは、タルソに引きこもっていたサウロをわざわざ探し出し、アンテオケの働きへと連れ出す(使徒11:25〜26)。パウロを表舞台に出したのは、バルナバの一押しだった。

【その後】ぶつかり、別れる
だが二人は、美しいままでは終わらない。第二回の伝道旅行を前に、同行者マルコをめぐって「激しい争論」となり、ついに袂を分かつ(使徒15:39)。かつて自分を引き上げてくれた恩人と、パウロは衝突し、決別した。聖人同士の麗しい物語ではない。

【私の受け取り】
二つのことを教えられる。ひとつ、パウロも、誰かに引き上げてもらって世に出たということ。孤高の天才ではない。信じて手を差し伸べる人がいなければ、あの迫害者は歴史に埋もれていたかもしれない。もうひとつ、その大切な関係ですらぶつかり、壊れることがあるということ。パウロは人間関係の達人ではなかった。恩人とも別れる、不器用な人だった——だからこそ、近い。

【今日への一行】
パウロを世に出したのは、彼を信じた一人だった。人は、引き上げてくれる誰かによって立つ。

底本:木下順治『パウロ——回心の伝道者』(筑摩書房)。使徒9・11・15章。聖書引用は口語訳。

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