日々の工夫 ── 火を絶やさない習慣(人物篇11)

前に見たように(05)、パウロは「火は消えうる」ことを知っていた。では、彼は実際にどうやって火を絶やさなかったのか。手紙の端々から、その地味な日々の習慣を拾ってみたい。特別な才能ではない。私たちにも真似できることばかりだ。

絶えず祈り、すべてに感謝する。「絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい」(Ⅰテサ5:17〜18)。「何事も思い煩ってはならない。ただ、感謝をもって祈と願いとをささげ……」(ピリピ4:6)。祈りと感謝は、火にくべる薪だった。

仲間と共にいる。パウロの手紙は、たいてい一人の署名ではなく、シラスやテモテとの連名で始まる。彼は同労者に支えられ、支え合って歩いた。火は、一人では消えやすい。

手を動かして働く。天幕を織り、自分のパンを稼ぎながら伝道した(Ⅰテサ2:9)。地に足のついた労働が、信仰を空中分解させなかった。

くり返し思い起こす。手紙は「あなたがたを覚えて、いつも感謝している」という回想に満ちている。受けた恵みを、彼は何度も思い返した。忘れないことが、火を保つ。

走る目標を持つ。「目標を目ざして走る」(ピリピ3:14)。ゴールを見ているから、途中で足が止まらない。

【私の受け取り】
並べてみて、ほっとする。パウロが火を保った方法は、天才のひらめきではなく、祈る・感謝する・仲間といる・手を動かす・思い出す・目標を見るという、平凡な習慣の束だった。どれも今日から真似できる。信仰を燃やし続けるのは、劇的な体験ではなく、この地味なくり返しなのだ。

【今日への一行】
火を保つのは、ひらめきではなく、地味な習慣の束。祈り、感謝し、仲間といて、手を動かす。

底本:木下順治『パウロ——回心の伝道者』(筑摩書房)。Ⅰテサ5/ピリピ4ほか。聖書引用は口語訳。人物篇05の具体篇。

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