伝道の旅の終わりに、パウロは一つの決断をする。各地の異邦人教会から集めた献金を携え、同胞の待つエルサレムへ上る。そこに危険が待っていることを、彼は知っていた。
【覚悟】
道中、行く先々で「縄目と患難とが、あなたを待っている」と告げられる(使徒20:23)。人々は涙で引き止めた。だがパウロは動じない。
あなたがたは、泣いたり、わたしの心をくじいたりして、どうするのか。わたしは、主イエスの名のためなら、エルサレムで縛られることばかりか、死ぬことも覚悟しているのだ。(使徒21:13)
木下順治のIX章が描くとおり、エルサレムでパウロはユダヤ人の陰謀に遭い、暴徒に襲われ、捕らえられる。旅の終着は、逮捕だった。
【私の受け取り】
ここで胸を打つのは、引き返せる場面で、引き返さなかったことだ。危険は予告されていた。仲間は止めた。それでも彼は行った。燃える心が冷めやすいことを知っていた人が(05)、最後の最後で、いちばん熱い決断をする。覚悟とは、恐れがないことではない。恐れを知りながら、なお進むことだ。尊敬できなかった彼の激しさは、こういう時にこそ、まっすぐな覚悟として現れる。
【今日への一行】
覚悟とは、恐れがないことではなく、恐れを知りながら、なお進むこと。彼は引き返せる場所で、進んだ。
底本:木下順治『パウロ——回心の伝道者』(筑摩書房)IX 最後のエルサレム行きより。使徒20〜21章。聖書引用は口語訳。


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