本章のテーマは「別れ」です。そして、ヤコブの死とヨセフの死をもって、創世記は幕を閉じます。
ヤコブの死(1節)。ヤコブはその遺言どおりにマクペラの洞窟に埋葬されます。息子のヨセフがエジプトの要人であったため、その願いが叶うだけでなく、エジプトの慣習に従った王室の葬儀(防腐処理や盛大な葬列を含む)をしてもらえました(3-13節)。
父ヤコブの死を機に、ヨセフの兄たちは、また恐れを抱きます。ヨセフは自分たちのことを本当は許していないのではないか、と疑っていることが、私たち読者とヨセフに明らかとなります。
15節:ヨセフの兄弟たちは父の死んだのを見て言った、「ヨセフはことによるとわれわれを憎んで、われわれが彼にしたすべての悪に、仕返しするに違いない」。
このことを知ったヨセフは悲しみますが、自分がどのように自らの遍歴を捉えているかを述べます。
20節:あなたがたはわたしに対して悪をたくらんだが、神はそれを良きに変らせて、今日のように多くの民の命を救おうと計らわれました。
ヨセフは死の直前、その兄弟たちとエジプトに定住しようとしているすべてのイスラエルの子らに大事なメッセージを残します。それとともに、やがて神が一族を顧みられたときには、自身の亡骸をカナンの地に埋葬してくれるよう願います。
25節:「神は必ずあなたがたを顧みられる。その時、あなたがたはわたしの骨をここから携え上りなさい」。
次の章(出エジプト記)では、エジプトでの定住が奴隷生活に変わりますが、それもいずれ終わることをヨセフは約束します。こうして、創世記は終わり、出エジプト記へ移ります。
創世記50章をよむPoint
1. エジプト式の埋葬(מנהגי הקבורה המצריים)
ヤコブもヨセフも、その亡骸はエジプト式の防腐処理を受けます。その処理(遺体の保存)は、3節によると40日間かかりました。そして公式な王家の喪に服す期間は70日と、たいそうな期間です。
2. ヤコブの葬儀の旅は2段階(שני שלבים למסע הלוויה של יעקב)
アタデの打ち場(ヨルダン側の東側で場所は不明)までは「戦車と騎兵」(9節)に伴われた盛大な行列によって運ばれ、そこからマクペラの洞窟までは、ヤコブの親族がその棺を「カナンの地へ運んで行って、マクペラの畑のほら穴に葬った」(13節)とあるように、近親者のみの行列によって運ばれました。
3. 予言的な視座(מבט נבואי)
死期の近かったヤコブのように(前章)、予言的なメッセージを残してヨセフはこの世から去ります。エジプトでの生活は、ヤコブの一族が自ら受け入れたものですが、その生活に終止符を打ちカナンの地に戻るには、神の介入が必要となります。その転機は突然到来します。24節:「わたしはやがて死にます。神は必ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう」。
ミリアム・ブルーメンタル著
※上記は929の日本語訳となります。
https://www.929.org.il/page/50/post/1460
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