トルドット 創世記25章19節〜28章9節

創世記

 パラシャット・トルドットのトルドットは、創世記25章19節の「アブラハムの子イサクの系図は次のとおりである」の系図の訳語です。

イサクは180歳で亡くなりますが、40歳でリベカと結婚し、子供が与えられなかったので、神に祈り与えられたのが、60歳の時で、双子のエサウとヤコブでした(25章26節)。

ヤコブは、野で狩猟して疲れて帰ったエサウにパンとレンズ豆のあつものを与えて、代わりにエサウの長子の特権を買い取ってしまいます(25章34節)。

26章では、飢饉が起こり、イサクの身の上に災難が降りかかります。

イサクはとりあえず、ゲラルのペリシテ人の王アビメレクの所へ避難しようとしますが、神が現れ、エジプトへ下ってはならない、わたしがあなたに示す地に留まりなさいと告げたので、ゲラルに住みます(26章2-6節)。

ここでイサクはアブラハムがエジプトでしたように、ゲラルの人々に妻リベカを、妹だと偽ります。それはリベカが美しかったので、妻と言えば殺されるかもしれないと思ったからでした。ここにイサクの気の弱い面がうかがえると思います。

しかしこのようなイサクにも、神は祝福し、種を播くと百倍(メア・シャアリーム)の収穫が得られ、ペリシテ人がねたむほどに、羊の群れ、牛の群れ、多くのしもべを持つようになります。ペリシテ人は妬みから、アブラハムの時に掘った井戸を埋めてしまい、アビメレクはイサクに立ち退くように命じます(12-16節)。そこでイサクはゲラルの谷(ナハル)に移動して住み、父アブラハムの時に掘った井戸がペリシテ人にふさがれていたのを、再び掘ります

ゲラル 現イスラエル南部レイーム(ガザ近郊)

谷(ナハル)とは非常に乾燥したワジと呼ばれる水無川で、雨期には一度に大量の水が流れる、井戸を掘るには困難な場所です。しかしそこを掘ると湧き出る水(マイム・ハイーム)を発見したと19節に書かれています。これは流水のことで、生命の水とも呼ばれます。まさにアビメレクから追われて、イサクは父アブラハムが掘った井戸から「生命の水」を発見したのです。

イスラエル南部ベエルシェバ アブラハムの井戸

 しかしゲラルの羊飼いが、これはわれわれのものだと争ったので、さらにイサクは別の井戸を掘りましたが、また争ったので、争いを好まないイサクは移動してもう一つの井戸を掘りました。今度は争わなかったので、レホボテ(主がわれわれの場所をひろげられたの意)と名づけます(22節)。

 それからイサクはベエルシバに上ると、主が現れ「私は父アブラハムの神であり、わたしのしもべアブラハムの故に、あなたと共におり、あなたを祝福し、あなたの子孫を増すだろう」(24節)と告げます。そこでイサクは祭壇を築き、主の名を呼び、天幕を張り、井戸を掘ります(25節)。

 このように人と争わず黙々と父アブラハムの井戸を掘り続けて、生命の水を発見し、ベエルシバで神の声を聞いたイサクを見て、一度はイサクを追い払ったアビメレクが「我々は主があなたと共におられるのをはっきり見ました」と言って来ました。そこで誓いを立てて、契約を結び、互いの安全を確保し、その時掘られた井戸をシバ(誓い)と名づけて、新たに「ベエルシバ」(誓いの井戸)と呼んだと33節にあります。

このベエルシバは、21章33節でアブラハムがアビメレクと契約を結んだ地であり、アブラハムはぎょりゅうの木を植えて永遠の神(エル・オーラム)の名を呼んだ場所でもあります。

神が「私があなたに示す地に留まりなさい」(2節)と言われた地とは、エジプトではなくアブラハムに示された地、約束の地であることが分かります。

 さて晩年のイサクの様子は27章に描かれています。死が真近くなり、視力の衰えたイサクは長男エサウを呼んで、鹿を狩猟して調理し食べさせてくれれば、祝福すると言い渡します。リベカがそれを聞いてヤコブに、私が山羊の肉を調理してイサクに与えるなら、きっとあなたを祝福するだろうと伝えます。

 しかしヤコブは、兄エサウは毛深いが、わたしは肌が滑らかなので、父イサクは見抜いてしまうと母に言うと、リベカはエサウの晴れ着をヤコブに着せ、山羊の皮を手と首の滑らかなところにつけさせ、山羊の美味しい食べ物を持たせてイサクの所へ行かせます。
 策は成功してイサクはヤコブをエサウと勘違いして祝福します。祝福の内容は27章27節以降に書かれていますが、神が天地の恵みを与え、諸々の民があなたに仕え、あなたは兄弟の主となり、あなたを呪うものは呪われ、あなたを祝福する者は祝福されるという12章3節で神がアブラハムを祝福されたものと同様なものです。

 長男エサウは、ヤコブがだまして祝福を奪ったことを知って激怒し、ヤコブを殺そうと考えます。それを知ったリベカはハランにいる兄ラバンに逃がそうとします。イサクもカナンの娘を妻に娶ってはならない、ラバンの娘を娶りなさいとヤコブに言い聞かせ、全能の神が祝福されるようにと祈りつつ送り出します(28章1-8節)。

 このパラシャーでは、イサクからヤコブに祝福が移っていく有様が描かれていますが、イサクはアブラハムの井戸を掘りながら祝福を受け継ぎ、ヤコブは兄エサウから奪うという形を取りますが、確実に受け継がれていくのが分かります。

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