ルツは、新約聖書マタイ伝の最初に「ボアズはルツによるオベデの父」とありますようにキリストの系譜の中にある特別な四人の女性の中の一人でもあります。第一章は、飢饉のために異国に逃げて、家族の半分を失ってユダのベツレヘムの地にルツとともに帰ろうと決意するところまでが書かれています。
ナオミの信仰
聖書の中のルツという女性を語るとき、はずせないのは姑のナオミの信仰ではないかと思います。というのも、ルツが「あなたの神は私の神です」といってナオミに付き従うことができたのは、一緒に過ごした日々の中でルツが「ナオミの信じる神様に出会ってしまったから」と想像するからです。
ルツの決意
神様を信じるというのは人間側の努力ですが、出会ってしまうともうそれは、その人自身を直接神様が導くことになるというのは旧約聖書を読んでいくとよくわかります。
そうでなければ、異邦人の嫁として一緒にユダのベツレヘムに帰ることはできなかったはずです。どんなことも神様がよきことを用意してくださるとわかっていればこそ、ルツは少しも不安はなかったことでしょう。
私自身、ナオミと同様に息子が二人がおりますので、夫に先立たれたあとの日々は過ごせても、さらにその息子に先立たれれば、自分の死を思わない日はないと思う気持ちがわかります。そんな気持ちでいるためか、ナオミも最初は若いお嫁さんの二人に、いわゆる自分は終わった人間だからついてくる必要はないと同行をことわります。
しかし、ナオミはルツの固い決心をみて心を変えるのです。1章19節のはじめにある「固く決心する」の意の【ミトアメツェット】という言葉には「力を尽くす」という原意があるようです。すでにこのときルツは、ナオミと生き、そして仕える人生にやる気満々で取り組もうとしていたに違いありません。
つまりナオミもルツの輝くような燃える心に触れて、一緒に帰ることを許し、そして決意したのでしょう。私たちも、男女、友人、親子の間で、互いが心折れるようなときに、このようなパートナーがいるだけで支え合って生きることが出来ます。
ユダの地にルツと帰る
モアブの地からルツを連れてベツレヘムに帰ると決心はしたもののナオミといえば……これからのことを考えてなのか、今まで尊敬できる姑としてルツを導いてきた姿から一転、一章の最後では「自分をナオミ【愉しみ】でなく【マラ(苦しみ】と呼んでください」といって、ベツレヘムでの暮らしが始まります。
ユダのベツレヘムに着いたころ大麦の刈り入れが始まる時だった、、、続く
原ふゆこ
ルツ記 1章
モアブの野へ
1さばきづかさが世を治めているころ、国に飢きんがあったので、ひとりの人がその妻とふたりの男の子を連れてユダのベツレヘムを去り、モアブの地へ行ってそこに滞在した。
2 その人の名はエリメレク、妻の名はナオミ、ふたりの男の子の名はマロンとキリオンといい、ユダのベツレヘムのエフラタびとであった。彼らはモアブの地へ行って、そこにおったが、
3 ナオミの夫エリメレクは死んで、ナオミとふたりの男の子が残された。
4 ふたりの男の子はそれぞれモアブの女を妻に迎えた。そのひとりの名はオルパといい、ひとりの名はルツといった。彼らはそこに十年ほど住んでいたが、
5 マロンとキリオンのふたりもまた死んだ。こうしてナオミはふたりの子と夫とに先だたれた。
ルツの決意
6 その時、ナオミはモアブの地で、主がその民を顧みて、すでに食物をお与えになっていることを聞いたので、その嫁と共に立って、モアブの地からふるさとへ帰ろうとした。
7 そこで彼女は今いる所を出立し、ユダの地へ帰ろうと、ふたりの嫁を連れて道に進んだ。
8 しかしナオミはふたりの嫁に言った、「あなたがたは、それぞれ自分の母の家に帰って行きなさい。あなたがたが、死んだふたりの子とわたしに親切をつくしたように、どうぞ、主があなたがたに、いつくしみを賜わりますよう。
9 どうぞ、主があなたがたに夫を与え、夫の家で、それぞれ身の落ち着き所を得させられるように」。こう言って、ふたりの嫁に口づけしたので、彼らは声をあげて泣き、
10 ナオミに言った、「いいえ、わたしたちは一緒にあなたの民のところへ帰ります」。
11 しかしナオミは言った、「娘たちよ、帰って行きなさい。どうして、わたしと一緒に行こうというのですか。あなたがたの夫となる子がまだわたしの胎内にいると思うのですか。
12 娘たちよ、帰って行きなさい。わたしは年をとっているので、夫をもつことはできません。たとい、わたしが今夜、夫をもち、また子を産む望みがあるとしても、
13 そのためにあなたがたは、子どもの成長するまで待っているつもりなのですか。あなたがたは、そのために夫をもたずにいるつもりなのですか。娘たちよ、それはいけません。主の手がわたしに臨み、わたしを責められたことで、あなたがたのために、わたしは非常に心を痛めているのです」。
14 彼らはまた声をあげて泣いた。そしてオルパはそのしゅうとめに口づけしたが、ルツはしゅうとめを離れなかった。
15 そこでナオミは言った、「ごらんなさい。あなたの相嫁は自分の民と自分の神々のもとへ帰って行きました。あなたも相嫁のあとについて帰りなさい」。
16 しかしルツは言った、「あなたを捨て、あなたを離れて帰ることをわたしに勧めないでください。わたしはあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です。
17 あなたの死なれる所でわたしも死んで、そのかたわらに葬られます。もし死に別れでなく、わたしがあなたと別れるならば、主よ、どうぞわたしをいくえにも罰してください」。
18 ナオミはルツが自分と一緒に行こうと、固く決心しているのを見たので、そのうえ言うことをやめた。
19 そしてふたりは旅をつづけて、ついにベツレヘムに着いた。彼らがベツレヘムに着いたとき、町はこぞって彼らのために騒ぎたち、女たちは言った、「これはナオミですか」。
20 ナオミは彼らに言った、「わたしをナオミ(楽しみ)と呼ばずに、マラ(苦しみ)と呼んでください。なぜなら全能者がわたしをひどく苦しめられたからです。
21 わたしは出て行くときは豊かでありましたが、主はわたしをから手で帰されました。主がわたしを悩まし、全能者がわたしに災をくだされたのに、どうしてわたしをナオミと呼ぶのですか」。
22 こうしてナオミは、モアブの地から帰った嫁、モアブの女ルツと一緒に帰ってきて、大麦刈の初めにベツレヘムに着いた。
コメント